Introduction

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1. Introductionは難しい

Introductionでは短くシンプルに魅力的なストーリーを作り上げなければいけません。読者が「この論文は面白そうだ」「これは大事な問題だ」と思ってくれるようなIntroductionを目指します。

しかしIntroductionは非常に重要である一方、もっとも難しいセクションと言っても過言ではありません。研究指導をしていてもこの部分の修正が一番時間がかかるように思います。まず臨床研究論文のイントロダクションは三部構成ということを念頭に置きましょう。

  1. なぜこの研究が大事なのか?という導入部分
  2. この研究領域においてわかっていることとわかっていないこと(knowledge gap)
  3. 研究の仮説と目的

この三部構成を意識した上で、1-1.5 page(500 words程度)に収めましょう。心理学系などではもっとIntroductionが長い事もありますが、多くの臨床医の先生が執筆する領域の研究ではこれくらいの短さが一般的だと思います。人によってはイントロダクションが長い論文は導入部分をまとめる力がない=研究の論理展開もイマイチそう、と評価することもあります。

ChatGPTで適切なプロンプトを書けばコアアイデアは作ってくれますし、今後他のgenerative AIで似たようなことはいくらでも可能でしょう。


2. 一段落目(研究の導入)

この段落の目的は読者を惹きつける事、そして研究テーマにつなげることです。そのために話は大きく始めて、それから狭めていきます。例えば「高齢者において肺炎は主要な死因である。死因の第**位を占めており、公衆衛生学的も重要な問題である」など大きな視野にたって始めましょう。有病率、受診数、死亡率、コストなど、疫学的な研究から具体的な数字を引用すると、読者の関心を引きつけられます。

1段落目を読み終わった時点で、「確かにこの問題は重要だ」と思わせるような文章にしましょう。ただし、本筋とあまり関係のないことを強調しすぎないようにします。ちなみにあまりにこの段落が長いと冗長な印象を受けるのでIntroduction全体の1/4-1/3程度が望ましいと思います。

用いる表現の例としては下記があります。

・** is a major public health problem
・In the last decade / Over the past decade,
・*** have been widely used for
・*** have important implications for
・The *** guidelines emphasizes/recommends
・Therefore, it is essential to optimize ***
例を挙げる時はsuch as / including / for example / e.g.などを用 いる


3. 二段落目(knowledge gap)

この段落の目的は「what’s known(分かっていること)」と「what’s unknown(分かっていないこと)」の差であるknowledge gapを明確にすることです。そしてこのgapを埋めることが研究の目的になります。過去の研究を踏まえていかにこのgapを鋭くするかが鍵です。具体的な書き方はKRSK先生が下記の記事でまとめているので参考にしてください。

また過去の研究が多い場合にはその研究限界などを説明したうえで、gapが存在することを明確にします。まったく過去に研究がない場合でも類似している研究を引用し、研究領域のエビデンスが不十分であることを説明しましょう。ただし、過去の研究を引用しすぎてレビューのようにならないよう注意しましょう。あくまでサマリーです。この段落が最も難しくかつ重要な点となります。

書き方にはいきなりknowledge gapを書いてから具体例を示したり、先に過去のエビデンスを示してからknowldge gapに繋げていく方法がありますが、筆者は後者で書くことが多いです。

まず「今まではこういうエビデンスがある」というのを数行で要約し、過去の文献と一緒に提示します。同時に過去の研究限界に関しても触れられると効果的です(もちろん自分の研究にはそれらの研究限界がないことが前提)。そして「However」 などの反語で強調しつつknowledge gapを明記します。Little is known about〜などが決まり文句です。

この段落では過去の研究を引用することが一般的ですが、下記はその一例です。

・A single-center, observational study reported ~
・The literature has reported ~
・Several studies have reported that ~
・A previous report of ED patients suggested ~
・Several/Multiple studies from the anesthesia and pre-hospital literature support ~
Goto et.al reportedなどは用いない(誰が書いたかはそんなに重要ではなく情報量が少ないため。著名な論文であれば可)

また、目的の段落に引き継ぐためにはknowledge gapを提示しますが、その書き方の一例として下記があります。

・*** remains largely unclear,
・There is a compelling need to
・There is little/no evidence to support (or refute)
・While ***, no study has investigated ***
・Although ***, little is known about


4. 三段落目(研究の目的と仮説)

そして、「自分の研究の目的はズバリこれだ」と目的を明確に書きます。臨床研究の目的は多くの場合下記のいずれかに該当すると思います。この研究目的の区分がよく分からない場合は、まだ論文を書く段階にありません。もう一度計画書とデータ・結果を見直してみましょう。筆者の本もお勧めです。

  1. 記述研究
  2. 関連性の探索(リスク因子探索の研究など)
  3. 因果推論(治療や効果の推定、あるいは特定の因子とアウトカムとの関連)
  4. 診断・予測

この段落の書き方の一例に下記があります。

・To address this knowledge gap in the literature, we aimed to examine whether
・To address this knowledge gap, we aimed to test the hypothesis that
・We analyzed *** data to determine whether the use of an X decreases


5. ChatGPTなどの利用

イントロダクションを書くにはストーリーが重要ですが、「大事な論文を引用していない」「自分に都合のいい論文しか引用していない」というのは結構査読者に指摘されるところです。これを防ぐには文献検索が必須ですが、Connected Papersをうまく使いましょう。

ChatGPTは一段落目や比較的定型文となる目的を書くときには楽に文章を作ってくれるのですが、研究のコアとなる、自分が見つけた”Knowledge gap”の部分は先に自分の言葉で書いてから、ChatGPTは校正として使うのが良いのではないかと思います。

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