症例報告おすすめ書籍
目の前の患者からはじまる臨床研究: 症例報告からステップアップする思考術 文字通り症例報告から始める臨床研究のガイド本です。症例報告に該当するページはあまり多くないですが、エッセンスが詰まっているので、症例報告から臨床研究を目指したい人にはお勧めです。実際のところ、症例報告のTipsは世の中たくさんあるので、やるかやらないかというだけだと思います。 | |
論文作成ABC:うまいケースレポート作成のコツ 文字が多い上に分量があるので結構読むのが辛いのですが、内容は充実しており、どんな症例を選ぶと良いかも含めてしっかり記載してある良書です。 |
1. 症例報告のキーワードは3つ
はっきり言いましょう。論文化されない症例報告には、学問的な価値はほとんどありません。
東京大学大学院 公共健康医学専攻 臨床疫学経済学講座 教授 康永秀生
という訳で、症例報告できそうな症例があったらどんどんチャレンジしてみましょう。
- 新規性
- 独自性
- 教育的視点
症例報告は「稀な疾患でないとダメだ!」と思いがちですが、稀なだけでは微妙です。稀だから何?となってしまい、メッセージが「稀だったので報告しました」になってしまいます。
BMJ Case Reportなどでも明記されていますがLearning Pointsこそが最重要点です。よほど珍しい、あるいは典型的な症例や画像を除いて、「あなたはこの症例から何を学んで、共有しようと思うのですか?」を明確にしてください。ここに対して簡潔に答えられるなら症例報告はできたも同然です。
2. 症例報告になる?
目の前の患者からはじまる臨床研究: 症例報告からステップアップする思考術 文字通り症例報告から始める臨床研究のガイド本です。症例報告に該当するページはあまり多くないですが、エッセンスが詰まっているので、症例報告から臨床研究を目指したい人にはお勧めです。実際のところ、症例報告のTipsは世の中たくさんあるので、やるかやらないかというだけだと思います。 |
上記の本から一部引用ですが、症例報告になるパターンとして下記が挙げられます。
- 未知あるいは非典型的な症状
- 未知あるいは稀な有害事象
- 教科書的な病因とは異なる病因を示唆する症例
- 診断困難な希少疾患の確定診断に至ったプロセス
- 治療中または経過観察中における予期しなかった事態の発生
- 新たな治療法あるいは既存の治療の新しい組み合わせの提案
- 望外の効果を示した試行的治療
- 診断・治療上の新たな課題(倫理的・社会経済的問題による治療の制約)
3. 症例報告のキモ
- 本当に確定診断がついているかどうか?
- 診断を裏付けるデータはあるか?できるだけ画像があった方が良い
- メッセージがクリアかどうか
- インパクトのある画像やレアな画像は投稿しやすい!(Clinical Image)
- 英語で文章を書く事は問題ではないので諦めないこと
論文と同じで多くの場合、書きたいことが定まってないから書けません。
あなたが面白いと思っていることが、必ずしも編集者・査読者が面白いと思うとは限りません。過去を振り返り、「これは臨床医として興味深かった」「これはメッセージ性がある」症例をいくつか選び、タイトルとメッセージを書いて同僚やメンターに聞いてみましょう。
4. タイトルで決める
- Vitamin D intoxication and severe hypercalcemia complicating nutritional supplements misuse
- Watch and Wait for rectal cancer in inflammatory bowel disease
- Myocardial edema in the setting of immersion pulmonary edema – Cause or effect?
上記3タイトルはいずれもBMJ Case Reports誌で、2023年6月に多くの読者に読まれたケースレポートTop 3のタイトルです。これだけ見ても「面白そう!」「メッセージはこうだろうな」というのが伝わりますよね。やはり何行も書かないといけない、あるいは説明しないと伝わらない症例報告はアクセプトされにくいのです。
自分の症例から得られたメッセージを一行にして、そこからタイトルを考えてみてください。そうすれば症例報告の筋が通って楽になると思います。
タイトルをつける際には「症例報告」や「文献レビュー」のような冗長な語句、あるいは「ユニークな症例」や「最初の報告」のような仰々しい語句は避けた方が良いとされています。