Results

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1. Resultsは出来るだけシンプルに

Resultsの本文はあくまでもシンプルを目指します。基本的には図表に語らせるため、強調したい部分の結果だけ書き出し、サマリーとして文章にします。数字はあまり羅列すると印象が薄れてしまうので、メインの結果まではできるだけ数字を減らし、メインの結果をズバッと数字で出すとインパクトがあります。目安ですが、2000-3000 wordsの論文に対し300-600 words程度を目指します。おおよそA4 1~1.5枚です。

研究内容によって書く事は変わりますが、大きく分けると下記の順で、Methodsと一対一で対応している必要があります。時折Methodsに書いていないことをいきなりResultsに書く先生もいますが、これは御法度です。

  1. Study flow(patient flow):原集団からどれだけの人が除かれ、最終的に何名が解析対象となったか
  2. Patient characteristics:研究対象集団の特徴を記述
  3. メインの結果:主に図表で示す
  4. サブグループ解析・感度解析の結果:重要な結果は本文の図表に含め、それ以外はsupplemental materialsに移動

また、Table 1やFigure 1などの箇所を太字にしておくと読みやすいのでお勧めします。

図表の書き方は様々ですし、用いた統計ソフトによるでしょう。図表の質は圧倒的にRが良いので下記資料を用いながら綺麗な図表を作成し、細かいところは画像編集ソフトやパワーポイントなどで修正します。

超入門! Rでできるビジュアル統計学 解析編 学会・論文発表に役立つデータ可視化マニュアル
次の書籍と合わせておすすめの一冊。統計解析の結果をいかに図表で示すかは非常にだいじであり、そのツボを突いた一冊です。
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Rの良い点の一つとして、図表の描画能力が高い点があります。医療従事者向けなので、上記と合わせて、統計解析だけでなくどのように図表を書くかが学べます。

2. Patient flowの書き方

第一段落ではStudy flowを書きます。Study flowとは「source populationには26,000人の患者がいて、そのうち1000人が年齢が18歳未満で除外され、残りの25,000人が対象となった」のような”患者の流れ”です。除外された人数を記載するときは、「除外基準に書いた順番で、それぞれ何人が除外されたか」を記載しましょう。順番が変わると各項目で除外される人数が変わります。たまにチャートの人数が合っていないことがあるので、必ず最後に除外された患者数と解析に含まれた患者数の合計が最初の原集団の数と一致しているか確認してください。

During 2007-2015, the database recorded 64,042 ED visits by children. Of these, we excluded 10,792 visits without the information on triage classification, 2 deaths on arrival, 1,138 who left before being seen or against medical advice, and 73 records with data inconsistencies. We included the remaining 52,037 ED visits in the current analysis. (Goto T et al. JAMA Netw Open 2019;2(1):e186937)

図でフローチャートを作り、本文あるいはsupplemental figureとして加えるといいです。観察研究における探索的研究や診断・予測モデルの研究であればsupplemental figureでも良いと思いますし、一方因果推論であればメインに加えて良いと思います。

Study flowchartを書く方法はいくつかありますが、最近はRを用いることで比較的容易に描けるようになりました。Rが苦手という人にとって最も簡単?なのはEXCELやPower Pointで作ってしまうことでしょうか。多分多くの医師が使い慣れているソフトなのでゴリ押しで書けますし、微調整しやすいのもポイントです。


3. Patient characteristics

次に研究対象となった集団がどんな集団であったかを記載します。多くの場合、患者の平均年齢、性別、既往歴などからはじまり、社会的背景、血液検査データなど、「研究対象となった患者集団がどのような群であるか?」を明確にします。これらの情報は通常 Table 1 に記載されるため、「Table 1=研究対象集団のまとめ」と一般的には認識されています。

ただし、この部分をあまり詳しく書きすぎる必要はありません。というのも細かい数字はTable 1を見れば分かることであり、研究のストーリーにとって大事なポイントのみを拾って記載すれば大丈夫です。ここで細かい数字が並んでしまうと、結果のところの数字のインパクトがやや薄れてしまう事もあります(細かい数字が並ぶ=意味のあることと思われるので情報が多くなる)。文章はサマリーを示すことが目的なので、1〜2パラグラフで簡潔に述べましょう。

Overall, the median age was 70 years (interquartile range, 60–79 years), 58% were female, and 73% were non-Hispanic white. Of these, 32,150 patients (17%) were obese. Obese patients were younger and more likely to be female, non-Hispanic black, and Medicaid beneficiaries compared with nonobese patients (all P<0.001). In addition, obese patients were more likely to have cardiometabolic comorbidities, including diabetes (53% vs. 25%), heart failure (34% vs. 23%), and hypertension (76% vs. 65%; all P<0.001) compared with nonobese patients. (Goto T et al. Ann Am Thorac Soc. 2018 Feb;15(2):184-191)


4. メインの結果の書き方

図表の順に沿ってパラグラフを分けて結果を述べて行くと、 比較的書きやすいです。まずは全体像を示し、次に個別の解析を書いていきます。

また臨床研究の論文において結果というのはあくまでも客観的な部分です。結果についての主観的意見や解釈は書かないようにしましょう。特に大事な点として、ここでも「査読者・読者に余計な労力を使わせない」ことを意識する必要があります。

  1. 図表と本文の数字が一致しているか確認する
    図表と本文の数字が違うというのはサイエンスにおいて禁忌ともいうべき事なのですが、かなり見かけます。多くの場合、指導者や共著者にコメントをもらったり、書き直しのタイミングで本文だけ修正が不十分な場合です。これだけは必ず確認しましょう。
  2. 図表と本文の順番が一致しているか確認する
    Tableの登場順は本文の登場順と一致していなければいけません。これも書き直しの段階で本文が前後した時に起こります。
  3. 図表の内容と本文の順番が一致しているか確認する
    これも多いのですが、Tableに出てくる変数の順番と、本文の順番が一致していないと読みにくいです。多くの読者は図表と本文を照らし合わせながら読みますから、「年齢、性別、…あれ、既往歴はどこだ?」となると洗練されていない印象を強く受けます。
  4. 主語とリズムを揃える。
    「男性は女性に比べて呼吸不全による挿管が多かった」という文章と「一方、女性では男性に比べて意識障害による挿管が少なかった」という文が混在すると、何が基準なのかが分かりにくくなってとても読みづらいです。
  5. 推定値には必ず95%信頼区間をつけ、p値は必要なら示す
    効果や関連性の推定においては、点推定値とその信頼区間を書く必要があります。近年ではp値は用いられなくなっているのですが、author guidelinesに「使うな」と明記されていないのであれば併記しておき、査読者や編集者に言われたら削除でも良いです。
  6. オッズ比などの数字と解釈の方向を逆転させない。
    挿管成功に対する「肥満あり」のオッズ比が0.70の時に、「肥満のない患者は高い挿管成功率と関連していた」と書いてはいけません。低い=オッズ比<1.0ですから混乱します。
  7. 都合の悪い結果にもちゃんと触れる。
    これは見せ方の問題でもありますが、都合の悪い結果でも、結果は結果です。さらりとでいいので触れましょう。結局レビュワーが気付いて指摘されるよりはいいです。

5. サブグループ解析・感度解析の結果の書き方

サブグループ解析の目的は「各サブグループで効果や関連性の違いがあるかどうか」を見ることでした。従って、サブグループ解析では効果の異質性に注目します。この時、本当にグループ間で効果の差があるかどうかはinteraction termを用いた検定が必要である事に注意しましょう。

一方感度解析では解析に用いた前提を変えても結果が一貫しているかどうかを示します。統計モデルがちょっと変わっただけで真逆の結果が出ては困ります。そこで感度解析ではモデルを変えたりアウトカムのカットオフなどを変える形で結果を出しますが、「一貫していたかどうか」を文章で示せばよく、メインの結果のようにあまり細かい数字を出す必要はありません。

These finding were consistent in the sensitivity analyses stratified by age and sex. Likewise, the sensitivity analysis adjusting for prior acute exacerbation of COPD hospitalization as a covariate and the analysis with stabilized IPW also demonstrated consistent results. In the analyses including obesity-related respiratory conditions, obese patients with OHS had a significantly higher risk of NIPPV use, invasive mechanical ventilation use, and prolonged hospital LOS (all P < 0.001) compared with nonobese patients. (Goto T et al. Ann Am Thorac Soc. 2018 Feb;15(2):184-191)


9. ChatGPTなどの利用

Resultsにおいては、自分で必要な結果を取捨選択する必要があるので、文章校正目的以外ではChatGPTなどを使うところは比較的少ないかもしれません。

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