投稿する雑誌選び

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1. 投稿する雑誌に関して

最終的にどこに投稿するかは書き上げてからで良いですが、解析結果が出たらまずは大まかに投稿先を決めましょう。同じ結果から得られるメッセージでも医学誌の読者層が異なればメッセージの伝え方も変わります。例えば投稿先が米国の雑誌ならできるだけ米国のデータを参考にしてみる、集中治療系の論文だけど読者層が循環器内科なら循環器内科医が興味を引くように書く、などです。

「この研究結果ならこの医学誌の読者に読んでもらいたい」というのをメンターと相談しながら3つほど挙げましょう。この時に参考になるのはその医学誌がどのような論文を出しているか、インパクトファクター、そして自分が引用している文献の雑誌かどうかです(往々にしてレベルが高いので注意)。

投稿するときにはだいたい2,3本に絞りますが、チャンスは3回までと思っておいたほうがいいです。

30%ぐらいしか通らなさそうだけど、挑戦する価値のある雑誌
50%は通ると思われる雑誌
90%通る雑誌

一度リジェクトされるとわかりますが、はじめてのリジェクトは「あんなに時間をかけて頑張ったのに…」と精神的にこたえます。しかも返事が返ってくるまで数ヶ月かかるので内容も忘れかけてしまい、次の雑誌に投稿するモチベーションを上げるのが困難になります。さらに内容もどんどん古くなるので、 できるだけ早いうちのアクセプトを目指しましょう。

投稿戦略は色々あります。とにかく有名誌から出していく人、早期のアクセプトを目指す人など。ただ、このマニュアルを読むような初学者がプロの戦略をまねてもあまり良いことはないと思います。僕はアクセプトを優先し世の中に自分の知見を発表するというプロセスを知ること、そして業績を作ることが優先されると思います。ただしアクセプト優先と言っても、俗にいうハゲタカジャーナルに投稿は絶対に辞めましょう。また、PubMedに掲載されていても怪しい雑誌があるのも事実ですが、とにかくPubMedに掲載されていない雑誌は絶対に避けるべきです。

Beall's List – of Potential Predatory Journals and Publishers

都市伝説的な話として、編集者としては自分の雑誌のインパクトファクターを上げたいと思うのが自然なので、投稿論文がその医学誌の文献を引用していたら印象がわずかに良いかも…という話は聞きます。正直に言うと、自分が論文を査読しているとき、自分の論文が引用されていると「おっ」とは思ってしまいます。編集者も査読者も人間だということを忘れないでください。


2. インパクトファクター

多くの人が気にするのが投稿する医学誌のインパクトファクターでしょう。他にもh-indexや色々な指標がありますが、何だかんだ言って多くの医学系研究者が注目している数字だと思います。

コロナ関連の論文により、この1-2年はインパクトファクターがとんでもないことになり、もはや意味を呈していないと筆者は思います。ただ、いくらインパクトファクターを用いることへの批判があったとしても、少なくとも現時点においては影響力があるのは間違いないですが、高いインパクトファクターの雑誌ほど読まれるのも事実でしょう。

とはいえ、インパクトファクターの高い雑誌に出す事も大事ですが、その人の行って来た研究が積み重なって前を向いているかどうか、一つのストーリーになっているかどうかの方がずっと大事だと思います。あまりインパクトファクターに固執し過ぎないようにしましょう。とりあえずSNS等で「〇〇雑誌(IF=**)に掲載!!」というのはまあ避けた方がいいのではないかなと思います(気持ちはよく分かりますし、筆者も経験あります)。

雑誌のインパクトファクターは大学であればJournal Citation Report(JCR)から確認できます。契約していないと見れないので、個人が自由にみることはできません。投稿したい雑誌のインパクトファクターはを調べるには雑誌のウェブページに行くのが確実です。少し昔にGoogle Chromeの拡張機能であるPubMed Impact Factorがありましたが、更新されていません。

ここでたまに問題になるのは専門誌に出すか、その専門誌よりもインパクトファクターが高い一般誌やオープンジャーナルに出すかということ。例えば救急外来における循環器疾患の研究だと、見方によっては循環器の雑誌に投稿することも可能です。救急領域と循環器領域では循環器領域のほうが総じてインパクトファクターが高いので循環器の雑誌に出す人もいると思います。どの雑誌に出すかはメンターと相談ですが、基本的にはインパクトファクターよりも読者を意識し、自分が専門としている領域の雑誌に投稿する方が良いとは思います。

はじめの頃はインパクトファクターが1違うだけで悩むこともあるかもしれませんが、研究を続けていけばその程度の差は割とどうでも良いことに気づきます。


3. 投稿先がわからない

もし、「論文を書き上げたけど、どこに投稿して良いかわからない」場合、文献を引用した雑誌から選ぶのも手段です。近年ではアブストラクトを貼り付けると、AIが向いていそうな雑誌を判断してくれるサイトも出て来ましたので使ってみてはどうでしょうか。


Journal Finder
Elsevier Journal Finder helps you find journals that could be best suited for publishing your scientific article. Journa...

Springer Journal Suggester

いくつかの学会誌に蹴られて投稿先がなくて困った場合、国内の学会誌やオープンジャーナル(数十万円しますが)は比較的採択率が高いのでそういうところに出すのも良いと思います。ただ、あまりにリジェクトが続く場合、大きな欠点がある可能性が高いので辛いかもしれませんが論文を一度見直してみましょう。

筆者が投稿先に困った候補として考える雑誌の例として下記があります。これはテーマ的に学会誌が難しく投稿先に悩んだ場合も含みます。

  1. BMJ Open(オープン)
  2. PLOS ONE(オープン)
  3. Scientific Reports(オープン:通称サイレポ)
  4. JMA Journal (日本医師会誌)
  5. Intern Medicine(日本内科学会誌)
  6. BMC Research Notes(オープン)


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