Table作成と脚注

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1. Tableがなぜ必要か

臨床研究というのは母集団からサンプルを取ってきて推測を行いますが、Tableは得られたサンプルの情報(記述統計)と推定結果(推測統計)を示すために必要になります。臨床研究であれば、一つの論文に3個程度が理想と思われます。

通常Table 1には得られたサンプルの特徴、すなわち患者の特徴(patient characteristics)が来ます。その後は主要結果のtable(s)が来ることが多いです。ただし、記述研究やランダム化比較試験の場合はこの限りではありません。多過ぎる場合はsupplemental fileとします。 本当に必要と思われるものを本文のtableとしましょう。

Tableは基本的にRのgtsummaryが圧倒的に使いやすいので、個人的にはgtsummaryで扱えるようにするのが良いと思います。使い方はwebの検索や本webで紹介している書籍に使い方が書いてあります。

特にTable 1の書き方は下記論文を参考にしたいくつかの記事があるので是非目を通してください。


https://www.rwdnavi.com/?p=86

【保存版】研究の必需品!一歩進んだTable 1の描き方ガイドライン
研究者なら誰もが触れたことがあるだろう表、それがTable 1。たかがTable 1、されどTable 1、そんなTable 1に内的妥当性・外的妥当性から光をあて、「より質の高いTable 1を描くには」ということを解説します。


2. 特に気をつけるべき点

  1. 全情報を載せるのではなく、各tableのメッセージを明確にすること
  2. Tableが画像ファイルの埋め込みになっていないこと
  3. 数字が図・表・本文で違うのは禁忌!意外と多い。
  4. 表に出てくる変数の順番と本文に登場する順番が一致していること
  5. 本文は平均値と標準偏差で書いてあるのに、図表は中央値と四分位で書いてあるなどの矛盾がないこと
  6. 解析で用いている検定方法と、図表で用いている検定方法が異ならないこと
  7. Footnote(注釈)の記号がおかしい、コピペが残っていないようにすること
  8. フォントが統一されていること

このミスが出る理由として、単純な書き間違いによるものもありますが、多いのは1)コピー& ペーストによるもの、2)一旦tableを作る→相談で再解析→書き直し、というプロセスにより元のtableと本文の数字に相違が出るもの、という2パターンです。

したがって再解析した場合などtableが変更された場合は要注意です。数字を変えたらそれに対応する本文、abstract、table、figureなどすべての箇所に注意しましょう。


3. Tableの基本的な書き方

TableはExcelや統計ソフトなどで書き、それをWordに貼り付けてから整形するのが一般的かと思います。細かい点は下記の図に示したので参考にしてください。査読をしていると色々な形式の表が送られてくるので明快な答えはありませんが、とにかく上に書いたように「メッセージ・ゴールがはっきりしていること」「見やすいこと」が大事です。

また、ダブルスペースにする必要はなく、指定がなければフォントサイズも10pt程度まで落として大丈夫なことが多いです。Table 1は得られたデータを表しますが、characteristics全部を記載するのではなく、ある程度要約しましょう。分量的には大きくてもA4 1枚に収まる範囲くらいがちょうどいいんじゃないでしょうか(記述研究とかだとやむを得ない場合もありますが、査読側としてはページを跨がれると読みにくい)。 残す項目は患者集団を示す特徴として大事なものとしか言いようがありませんが、例えば合併症なんかは「selected comorbidities」として3-5個ほど重要なものや多いもの順で示すなどして、詳細はsupplemental tableに入れることもあります。

  1. タイトルには略語を使わず、タイトルのみで通じるようにする
  2. 罫線は基本的に一番上、項目の下、一番下の三本
  3. サンプル全体を表す場合はtotalではなくoverall
  4. 変数はスペースもしくは段落下げ(インデント)を用いて階層構造にして読みやすくする
  5. 単位を明確にする
  6. 小数点などの桁数は揃え、必要な時のみ細かく示す(例えば0.3%など四捨五入で0になってしまう場合)
  7. Footnoteを有効活用する。ただしコピペが残りやすいところなので注意する。
  8. 無闇に略語を用いない。
  9. 因果推論における多変量解析の場合は用いたモデルをfootnoteに記載

多変量解析では点推定値と信頼区間を示します。因果推論において多変量解析を行なった場合はfootnoteに用いたモデルと調整した交絡因子を示しましょう。この時、一般には交絡因子のオッズ比などを解釈しないので交絡因子のオッズ比を示す必要はあまりありません。一方でリスク因子の探索や予測モデルの場合は各変数のオッズ比を比較するので全部示す必要があります。これらの話はTable 2 Fallacyとも呼ばれる問題で、やや難しいですが下記noteで簡単にまとめています。

Table 1 作成とTable 2 Fallacy|Tadahiro Goto
昨日の勉強会では各所で話題になっていたTable 1作成の論文と、併せてTable 2 fallacyについての発表。抄読会ではJAMA Netw Openの川崎病予測モデルの研究。結構テーマが発散しがちなのが悩みではあるんですが、自分の研...

4. Footnote(脚注)を軽視しない

Footnoteは表の下部にある注釈の事ですが、往々にしてこの部分がコピペだったり何も情報が書いていないというのをよく見かけます。Footnoteを上手に利用して「表を見れば内容が分かる」ようにしましょう。Footnoteに記載する内容として下記があります。

  1. データの表示の仕方、例えばn (%)など
  2. 略語(abbreviation)の一覧
  3. 脚注記号をつけた内容
  4. その他特記事項

例えばTable 1などではデータの多くがn (%)で示されているかと思います。このような時、全てにn (%)とつけるとtableが煩雑になってしまうので、footnoteに”Data are presented as n (%) otherwise indicated”と記載しておくことでスッキリします。

基本的に省略形は、すべて脚注で説明しないといけません。例えば集中治療の雑誌でICU、呼吸器の雑誌でCOPDというのはspell outしなくても許容されるかもしれませんが、それでもabbreviationとして明記しましょう。順番は登場順(表の行順)に記載するか、アルファベット順に記載します。どちらかに統一しましょう。

内容の一部においては脚注記号をつけて説明することがあります。この時適当に脚注記号をつける人もいますが、author guidelinesに従いましょう。勝手に1,2,3とかa,b,cとか*,**,***やめましょう。特に明記されていない場合、NEJMに沿った下記の順番がおすすめです。読み方のところを変換すれば記号が出てきます。

* アスタリスク
† ダガー(短剣符) 
‡ ダブルダガー 
§ セクション(節記号)
|| パラレル(平行符)
¶ パラグラフ(段落記号) 
⁑ ダブルアステ 
†† ダガー×2
‡‡ ダブルダガー×2


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